ゲストハウス研究家のヤス松尾@yasu_matsuo_jpnです。
今回は今更聞けない“最近聞くゲストハウスやホステルって何?”という疑問や、従来の大手ホテルとは何が違うのかなどをまとめてみます。
↑ポカラ (ネパール)にある私の大のお気に入りのゲストハウス“ルンビニリゾート”
インバウンド・宿泊・旅行業界に日々絡みながら生活している私自身が感じていることは、新しい言葉やルールが常にこの業界内では生まれているということ。
外国人を日本で受け入れるというサービス業界はまだ確立されている状態では無く、業界全体が切磋琢磨し、スタートを走り出したという状態です。
今回の記事では、宿泊施設の名称別の違いを私なりにまとめてみます。
“私は今後日本から旅行でも出るつもりはない”という方も、来日される外国人が増えていくことは確かなことなので、ぜひともお知りおき頂きたい内容です。
Today’s WWB topic
「宿泊施設解説書。ホテル・ゲストハウス・ホステル何が違う?」
旅行の仕方の変化
これまで旅行での滞在先といえば、ホテルの一択しかありませんでした。
しかしこの数年で宿泊所のみならず、スカイスキャナーで最安の航空券を探したり、トリップアドバイザーで近くの観光地をスマホで10秒で検索できるようになったり、旅の形は大きく変わりました。
Link
スカイスキャナー
TripAdvisor (トリップアドバイザー)
旅行会社に行かなければ、航空券もツアーの予約も出来なかったものが、スマホさえあれば旅行に関する全てを網羅できる環境になったのです。
今後もますます変化して行くことでしょう。
旅の仕方の変化に伴い、私たちが宿泊する施設にも変化が出てきました。
今では誰しもが聞いたことのある言葉になったゲストハウスやホステルは、ホテルや民宿の形が現代のニーズと共に変化したものです。
それでは本題に入り、私たちが宿泊する際に利用が考えられる施設の中身をみていきましょう。
様々な宿泊施設たち
①ホテル
説明不要のTHE宿泊施設。
一番の売りはやはり高級感・贅沢をキーワードに設計されているという点。
↑2012年に訪れたシンガポールにある世界的な高級ホテル・ラッフルズホテル。高級ホテルと聞くと高層な建物を想像しますが、こちらは3階建ての103全室がスイートルームになっております。もちろん私は宿泊せずに中に入っただけですが、今でもあの建物内のVIPな空間と雰囲気は忘れません。
ちなみに日本のみならず、一般住居を貸し出すAirbnbをはじめとする民泊運営をする方の増加により、ホテルの客数は減少傾向に。
これに対しホテル業界の方は素人でも参入出来てしまう民泊ビジネスに対しお怒りの姿勢なのが現状です。
②ビジネスホテル
こちらもホテル同様滞在に必要な設備は全て揃っていますし、アメニティも充実しています。
違う点はホテルと比べるとお部屋の広さは小さく、豪華さも無く、格安で宿泊されることを目的としている所。
↑2012年ネパールの旅で翌日の飛行機を待つために一泊だけした仁川空港 (韓国)すぐそばにあるビジネスホテル。最安の部屋にしたもののベッドがダブルで室内も広く日本の一般的なビジネスホテルと比べると少々豪華なクラスのお部屋。
③カプセルホテル
“安さ重視。寝れたら良いです”という建物内での快適さを求めていない方の利用が多いです。
料金はビジネスホテルと同等または安い料金という見方が一般的だったのですが、最近では欧米からカプセル型の形態が珍しいと注目を浴び、価格も若干上りつつある傾向でカプセル内・共有ラウンジの設備の差別化が目立ち、カプセルホテルという新たなブランドに注目されてきて競争化が進んでいます。
④民宿
現在流行中のゲストハウスの超原型。
上記の①〜③には無い、宿主・他の宿泊者とのふれあいが利用者の目的でもあるのが大きな違い。
食事の無い素泊まりで格安に泊まることもできますし、宿の方が美味しい家庭的な食事を作ってくれるプランなどもあります。
↑2012年に宿泊した富良野市にあるインドが大好きなご主人が運営されている民宿ダラムサラー。夜にはインド楽器の演奏を聞かせてくれました。
↑このような宿主との交流は、ホテル・ビジネス・カプセルホテルには100%無いことですよね。
⑤B&B・ペンション
現在TVニュースや不動産関係者の中で取り上げられているAirbnb(エアービアンドビー・民泊)の名称の由来はこのB&Bスタイルから来ています。
二つのBの意味はベッド&ブレイクファーストの意味で料金内に寝る場所と朝食がセットになっているのが前提です。
一方ペンションには食事の有無を選ぶことができ、外観がヨーロッパ調の建物が多いです。
しかしペンションでの食事も宿を感じる魅力の一つでもあるので、ペンション宿泊の際はぜひ宿の方の食事を楽しむ事も目的に入れていただきたいです。
B&B・ペンション共にご夫婦で運営されている方が多いですね。
↑函館市のペンションの朝食時の様子。標高の高い場所にあるため市内を眺めながら食事をすることができました。(2011年宿泊)
⑥ゲストハウス
主に個人、友人同士の旅行者利用が多いです。
日本のゲストハウスだと一泊¥3,000が一般的な価格。
しかし今後は¥3,000以上の宿泊費のゲストハウスが増えていくことでしょう。
これまでのゲストハウスは宿泊がメインでしたが、今後のゲストハウスは体験がメインの時代に突入しつつあるからです。
例えば農村部にあるゲストハウスは農業体験が出来る所や、本がたくさん準備されておりいつでもゆっくりと読書を楽しむことができる読書がキーワードのゲストハウスも出来ています。
(これら体験型ゲストハウスについては近日まとめる予定です)
豪華さを味わうよりも、その土地でしか味わえない体験の方が重視されている時代に変化しているのではないでしょうか。
旅行業界は世界の人々のニーズや趣向がわかりやすく反映されます。
↑私の地元・札幌にあるゲストハウスのドミトリールーム。お部屋の中身はシングル・ダブルなどの個室の他に、ドミトリールームと呼ばれる共同寝室も格安で泊まれるため一人で様々な場所を移動するバックパッカーなどに人気です。
ゲストハウスは格安で泊まれるというメリットもありますが、ドミトリー部屋の場合、知らない旅行者との共用なので、神経質な方の場合 (私がそうですが)他の宿泊者のイビキや体臭、毎日朝に酔っ払って帰ってくるパーティピーポーと同じ部屋になってしまったら完全にアウトな滞在になってしまう可能性もあります。
ドミトリールームの寝具はほとんどが二段ベッドで、部屋中に設置されています。
自分で下段か上段かを選べる所もあればゲストハウス側で指定されるところもあります。
私は寝る時にライトの光なども気にしてしまうので、二段ベッド上段ですぐ頭上に照明がある場所を指定された場合は、宿のスタッフに変更出来ないかを聞きます。
という少々細かい気になる点もありますが、なによりも最大のメリットはすぐに同じ旅人同士の友達が出来るということ。
旅をしていて、これに勝るメリットはありません。
究極の一期一会です。
ゲストハウスの最大の魅力は、スタッフや地元住民、他の旅行者との距離が近いという点。
一方ホテルには確実な高級感・ラグジュアリー要素、気持ちのいい接客が求められます。
もしもホテルでそれらと反するサービスや設備の不備があれば、クレームを言っても間違いでは無いでしょう。
しかしゲストハウスの場合そのような不備も多少愛嬌で通ずる部分があります。
例えばガイドブックには、エアコン完備と書かれていたので予約をしたものの、いざ到着するとエアコンが壊れて修理中で使えないと宿主から言われても、笑って流せる心が欲しいです。
(欧米や日本のゲストハウスの水準は良いのでまず無いですが、特にアジア圏だとお湯が出なかったり、扇風機が壊れている所も珍しくありません)
食事提供は基本的に無く素泊まりが普通。
食事提供があったとしても朝食のみでラウンジにパン、シリアル、コーヒー、紅茶、ジュース、トースター、ジャムが置かれており、時間内にご自由に食べてくださいという形式です。
↑シンガポールのとあるゲストハウスの朝食テーブル。海外にあるゲストハウスの場合、蓋が開きっぱなしのジャムやバターにハエがとまっていることもよくあるのでしっかりハエを手で払い、出来るだけ綺麗な食器を瞬時に取るのも海外ゲストハウス朝食を楽しむポイント。
“潔癖症なのでアジアへは行きたくない”という方はアジアのゲストハウスの中でも格安のドミトリールームは結構きついと思うので、Booking.comなどで清潔なホテルか相場よりも高めのゲストハウスを予約することをおすすめします。
しかし、日本では絶対に無理!ということをあえて旅先で実行してみると新たな自分に会えるかもしれません。
私も海外に行った際は、日本にいるときの思考とは逆の選択をあえて選び新たな自分を模索するなんてことをしています。
新しい自分を自分で見つけていく。
それが旅というものかもしれません。
⑦ホステル
ゲストハウスもホステルも、小規模での運営が多く、平均的な価格も一泊¥3,000ほどで、設置してあるアメニティや設備関係も非常に似ています。
両者のはっきりした違いや定義なんてのはどのサイトにも明確化されているわけでも、誰かが決めているわけでもありません。
“ゲストハウスもホステルも同じだ。”という方もいらっしゃるかもしれませんが、ゲストハウス研究家の私としてはここが違う、また今後この部分の違いが明確化されていくであろう箇所が一つハッキリと私の脳内にあるので書いてみます。
それは「デザイン性」です。
もちろんゲストハウスも費用をかけておしゃれな内装に仕上げている所もありますが、一番の最大の魅力は内装やデザイン性よりもやはり人との繋がりだと思います。
どんなに素晴らしいリフォームを施しても、愛想のない宿主、人との交流を無視した施設を私はゲストハウスとは呼びたくありません。
しかし個人であっても仲間を集めて時間をかけて内装を自分たちで行い、たとえ素人のリフォーム感が壁や室内に出ていたとしても、旅本来の目的である人との交流を重んじている宿なら、堂々とゲストハウスと私は呼びたいです。
一方ホステルはホテルのような豪華さでは無いものの、内装を楽しむのも一つの魅力と考えてもあながち間違いではないだろうと私は思っています。
かと言って人との交流はないかといえばそうではなく、ゲストハウスの方が交流感は強いイメージですが、旅人同士が交流できるスペースなどはホステルにもあります。
ホステルの内装やデザインに関してはインダストリアル調の施設が人気なようです。
↑ホテルのオシャレとはまた違う、ホステルらしいオシャレなデザイン。(http://untappedhostel.com/jpn/rooms.php)
交流の意思別推奨カテゴリ
一人だけの滞在を楽しみたい
ホテル・ビジネスホテル
他の旅行者や宿主との交流を存分に楽しみたい
ゲストハウス・民宿
他の旅行者とも仲良くしたいが一人の時間も欲しい
ホステル
という私なりのイメージです。
ゲストハウス第三世代へ突入。
今となってはゲストハウスにまつわる本や情報が簡単に入手できる時代です。
しかしかつてゲストハウスという言葉が全く浸透していない時代に、ゲストハウスを開業してきた方々の話を聞くと、近年のゲストハウス開業ラッシュ時にオープンされた方々とはまた違う苦労話を聞きます。
まず物件を探すにも一苦労。
立地も大きさも最高に良い空き物件を見つけて、不動産屋や物件所有者へ「ゲストハウス運営のためにこの物件を買いたい」と言っても誰もゲストハウスの意味がわからないため、まずはその説明からしなければいけないということ。
「ゲストハウスという言葉は聞いたことがあるけど内容はよく知らない」という今のような時代では無く、そんな言葉見たことも聞いたことも無いという時代です。
細かく説明できたとしても、次に不特定の外国人を招くなんて有りえないと嫌な顔をされる。
やっとの思いで、物件を購入できたとしても次に近隣住民から悪い噂を流されたり、苦情を取り払うという苦労があったそうです。
それでも、ホスピタリティの気持ちが支えとなり困難を乗り越えゲストハウスを運営されてきた方々。
このようにゲストハウスという言葉を浸透ゼロの時から運営されているゲストハウスを第一世代ゲストハウスと呼んでいます。
運営形式はシンプルに宿泊のみ。
次にこの3, 4年ほど前から起こったゲストハウス開業ラッシュ。
この時期に開業されたゲストハウスには「宿泊施設+飲食店の併設」がメインの形態となりました。
この時期に造られた形態のゲストハウスを第二世代ゲストハウスと呼んでいます。
そして今後増えていくであろう宿泊施設が第三世代ゲストハウス。
これが先ほどご説明した「宿泊+体験施設」という形態。
体験内容によっては、体験が一番の目的で宿泊が二の次とも言えるのではないかとも思えるゲストハウスも出てきています。
先ほどの例で出したように、農業作業が出来る、たくさんの本を何冊でも読書することができるなどコンセプトがはっきりしている業態です。
次回はそんな第三世代ゲストハウスについての詳細を綴ってみようと思います。